近年、日本の農業は、高齢化による労働力不足や後継者不足といった深刻な課題に直面しています。こうした状況を打破する切り札の一つとして、農業用ドローンが注目を集めています。農業用ドローンとは、農薬散布、肥料散布、播種、生育状況のモニタリングなど、様々な農作業を効率化・省力化するために開発された無人航空機です。
従来の農薬散布は、人力による作業やラジコンヘリコプターによるものが主流でしたが、広大な農地での作業は重労働であり、時間とコストがかかるという課題がありました。また、ラジコンヘリコプターは操作に専門的な技術が必要であり、導入のハードルが高いという側面がありました。
一方、農業用ドローンは、GPS(全地球測位システム)や各種センサーを搭載し、自動飛行や精密な散布作業を実現します。これにより、作業時間の短縮、農薬や肥料の節約、作業者の負担軽減、そして作物の品質向上といった効果が期待されています。
農業用ドローンと言っても、その用途や機能によって様々な種類が存在します。主な分類としては、以下のものが挙げられます。
最も一般的な農業用ドローンであり、液体状の農薬を広範囲に効率よく散布するために設計されています。タンク容量や散布幅、飛行時間などが機種によって異なり、圃場の広さや形状、散布する薬剤の種類によって最適な機種を選ぶ必要があります。近年では、可変ノズルやドリフト低減機構など、より精密で環境負荷の少ない散布を実現する機能が搭載された機種も登場しています。
粒状の肥料や除草剤などを散布するために用いられます。農薬散布ドローンとは散布機構が異なり、均一かつ正確な散布が求められます。大規模な水田や畑作地帯での利用に適しており、播種作業に対応できる機種もあります。
種子を圃場に直接散布する目的で使用されます。直播栽培における省力化に貢献し、特に水稲の直播栽培において導入が進んでいます。精密な位置制御技術により、均一な間隔で播種をし、収量向上に貢献することが可能です。
カメラや各種センサーを搭載し、圃場の生育状況を空からモニタリングするために使用されます。作物の生育状況、病害虫の発生状況、土壌の状態などを可視化し、データに基づいた精密な栽培管理を行うことが可能です。近年では、AI(人工知能)と連携し、異常を自動検知する機能を持つ機種も登場しています。
上記複数の機能を一台で実現できる多機能なドローンです。例えば、農薬散布とセンシングを同時に行ったり、粒剤散布と播種を一台でこなせる機種もあります。初期投資は高くなる傾向がありますが、一台で複数の作業を効率化できるため、長期的に見るとコストメリットが生まれる可能性もあります。
様々な種類の農業用ドローンが市場に投入されているため、どの機種を選んだらよいか分からないという方も多いのではないでしょうか。まず農業用ドローンでどんなことがしたいのかを明確にした上で最適な機種を選ぶことが重要ですが、そのなかでどんな視点で農業用ドローンを選定すればよいのか、農業用ドローンを選定する際のポイントを解説します。
農薬・肥料散布にあたり、何をどの程度の範囲に、どのくらいの量散布したいのかを明確にする必要があります。具体的なポイントは下記の通りです。
・タンク容量・積載量
圃場の広さや一度の飛行で散布したい量を考慮し、適切なタンク容量・積載量を持つ機種を選びましょう。大規模な圃場であれば、大容量のタンクを持つ機種が効率的です。
・散布幅・散布方法
散布したい範囲や作物の種類によって、最適な散布幅や散布方法が異なります。ノズルの種類や配置、散布パターンの調整機能などを確認しましょう。
・対応製品
液体農薬だけでなく、粒剤や粉剤、種子など、様々な製品に対応できる機種もあります。将来的な利用も見据えて、対応する資材の種類を確認しておきましょう。
安全かつ効率的な作業を行うためには、ドローンの飛行性能と安定性が重要です。そのため、下記の性能を抑えた選定が必要です。
・最大飛行時間・航続距離
一度の充電でどのくらいの時間飛行できるか、どのくらいの距離を移動できるかは、作業効率に直結します。圃場の広さや形状に合わせて、十分な飛行時間・航続距離を持つ機種を選びましょう。
・耐風性能
農作業は屋外で行われるため、風の影響を受けやすいです。一定以上の風速に耐えられる安定性の高い機種を選ぶことが重要です。
・GPS・RTK測位
自動飛行や精密な散布作業を行うためには、高精度な位置情報が不可欠です。GPSに加えて、より高精度なRTK(Real Time Kinematic)測位に対応した機種も検討しましょう。
・障害物検知・回避機能
安全な飛行をサポートする機能です。センサーで障害物を検知し、自動で回避する機能があれば、衝突のリスクを低減できます。
初めてドローンを操作する方でも扱いやすい操作性と、安全に作業を行うための機能は重要な選定基準となります。下記にその機能をご紹介します。
・操作インターフェースについて
専用の送信機やタブレットなど、操作に使用するインターフェースの使いやすさを確認しましょう。直感的で分かりやすいインターフェースを持つ機種がおすすめです。
・自動飛行機能
あらかじめ設定したルートを自動で飛行するウェイポイント飛行や、圃場の形状に合わせて自動で散布ルートを生成する機能などがあると、作業効率が向上します。
・フェールセーフ機能
バッテリー切れや通信途絶など、予期せぬ事態が発生した場合に、自動で離陸地点に戻るなどの安全機能が搭載されているかを確認しましょう。
・緊急停止機能
緊急時にプロペラを停止させる機能など、安全性を高めるための機能が搭載されているか確認しましょう。
長期的にドローンを活用するためには、メンテナンスのしやすさやメーカーのサポート体制も重要です。そのため、日常的なメンテナンスや部品交換が容易に行える機種を選ぶことで。ただし、機体のメンテナンス等自分自身で対処できない場合が多い為、万が一の故障やトラブル発生時に、迅速かつ適切な修理やサポートを受けられるメーカーや販売店を選びましょう。また、農業用ドローンの運用には、講習や資格取得が必要です。ドローンの安全な運用や操作方法に関する講習を提供しているサポート体制の充実したメーカー・販売店を選ぶことも重要です。
ドローンの導入には、機体本体の購入費用だけでなく、維持費(バッテリー交換、メンテナンス費用など)や保険料なども考慮する必要があります。初期投資だけでなく、長期的なコストパフォーマンスを比較検討しましょう。
いかがでしたでしょうか。今回は農業用ドローンの選定ポイントを解説いたしました。上記のように、農業用ドローンの選定ポイントは多岐に渡り、どんな機種を選んでさらにどんなメーカーを選定すればよいのか、簡単ではございません。そのため、農業用ドローンに関して、豊富な知識を持つ販売店やメーカーのサポートが必要不可欠です。スマート農業ナビでは様々なメーカーの農業用ドローンを取り扱っており、選定から納入後のサポートまで行っております。またご希望がございましたら、デモ飛行も実施しております。農業用ドローンに関して、お気軽にお問い合わせください。