「農業用ドローンといえば、稲作や麦がほとんどじゃないの?」 そう思い込んでいませんか?
実は最近はキャベツ、ハクサイ、レタスなど葉物野菜への農業用ドローンによる農薬散布が急速に普及しており、既に多くの現場で実用化されています。手作業でのホース防除やブームスプレイヤーでの作業は、重労働であり時間もかかります。もしドローンが使えれば、その負担を劇的に減らすことができます。
そこで本記事では、葉物野菜におけるドローン散布を行う際のポイントとどんな機体を選べば良いのかについて、分かりやすく解説します。
葉物野菜へのドローン農薬散布がこれまであまり進んでこなかった背景には「登録農薬の少なさ」や「風圧による作物へのダメージ懸念」がありました。しかし現在は状況が大きく変わっています。その理由は主に下記の2点です。
理由①:法的に認められた「登録農薬」が充実
現在、農林水産省の登録情報には、キャベツ、レタス、ハクサイなどの葉物野菜において「無人航空機による散布」が認められている薬剤が多数存在します。
例えば、以下のような主要な薬剤がドローンに対応しています。
・ベネビアOD(アブラムシ類、アザミウマ類など)
・プレバソンフロアブル5(コナガ、ヨトウムシなど)
・アミスター20フロアブル(べと病など)
このように、現場で主力として使われている農薬がドローンで撒けるようになったことが、普及の最大の要因です。
理由②:省力化の成功実績が出ており、効果が認知されている
農林水産省が進めるスマート農業実証プロジェクトでは、葉物野菜をはじめとする露地野菜で、ドローン防除により作業時間が手作業に比べて90%以上削減された事例も報告されています。農業用ドローンの性能は年々良くなっており、更なる効果が期待されます。
葉物野菜で農業用ドローンを使用した農薬散布は、稲作や麦と同じ感覚で農業用ドローンを飛ばすと、思わぬ失敗を招くことがあります。農業用ドローンを活用した葉物野菜の農薬散布では下記の2つのポイントに注意しましょう。
注意点①:ダウンウォッシュ(風圧)の影響と「泥はね」
ドローンは飛行するために下向きの強い風(ダウンウォッシュ)を発生させます。稲は比較的強いですが、葉の柔らかい野菜には注意が必要で、ダウンウォッシュによる風圧が強いと葉が裂けたり傷ついたりする可能性があります。
そして、地面に近いレタスなどは、ダウンウォッシュによる風圧で土埃や泥が舞い上がり、葉に付着します。これは商品価値を下げるだけでなく、「軟腐病」などの病気を誘発する原因になります。
上記の対策としては、
・作物上空2.5m〜3m以上など高度を高めに維持して飛行する。
・ゆっくり飛びすぎると風が当たり続けるため、適切な速度で走行させる。
といった対策が必要です。
注意点②:薬剤の付着性と「ワックス層」
キャベツ、ハクサイ、ネギなどの葉の表面には、白い粉のような「ワックス層(ブルーム)」があり、水などを弾く性質があります。
ドローン散布は「高濃度・少量散布」が基本ですが、水滴が弾かれて地面に落ちてしまい、薬剤が届かないことがあります。
上記の対策として、ドローン散布に対応した展着剤(スカッシュ等)を必ず混用し、葉に薬液が馴染むようにします。また散布時のノズル選定にも注意が必要で、可能であれば飛散を抑えることができるノズルを使用します。
注意点③:白菜・キャベツ・レタスなどの結球野菜の散布タイミングに注意
当たり前のことではありますが、白菜・キャベツ・レタスなどは、結球(玉巻き)が完全に終わってからでは、内部の害虫に薬が届きません。したがって散布時期にも注意が必要で、「結球開始前〜初期」の葉が開いている時期に散布するのが鉄則です。
葉物野菜、特に地面に近いレタスや、葉が重なり合う白菜・キャベツの散布において、機体に求められる必須条件は以下の2点です。
①ダウンウォッシュの制御性能がある
上述のように葉が広く柔らかいため、風圧が強すぎると葉が裂ける恐れがあります。また、強風による「泥はね」によって軟腐病など病害の原因となるため、ダウンウォッシュの制御がしやすい機体が求められます。
②薬液の粒子の細かさと展着性
葉物野菜は表面にワックス層があり、水を弾きやすい性質があります。大粒の農薬散布ではなく、細かい霧状で散布ができる性能が必要です。
当社では、DJI製・マゼックス製の農業用ドローンを取り扱っております。そしてどちらのメーカーにも葉物野菜に適した農業用ドローンがあります。
・マゼックスの場合(飛助シリーズ)
マゼックスは日本の小規模・複雑な圃場向けに開発された国産メーカーです。マゼックスの飛助シリーズは特徴として、特許技術を用いた「気流(ダウンウォッシュ)の最適化」があります。
マゼックスの機体は、ノズルをプロペラ軸の直下に配置する特許構造を採用しています。 これにより、プロペラ先端の強すぎる乱気流を避け、「作物に届く風」だけを利用して散布できます。結果として、レタス栽培などで懸念される「泥はね」や「舞い上がり」を物理的に抑制できるため、特にデリケートな野菜に最適です。
したがって、
・泥はねによる病気を防ぎたいレタス・白菜の農家様
・住宅地が近く、ドリフト(飛散)を極限まで抑えたい方
に最適です。
・DJIの場合(Agras T25 / T50 / T10)
DJIは世界シェアNo.1で、高度な自動航行機能が標準装備されています。特に注目すべき特徴は、最新モデルに搭載された「アトマイザー(回転式霧化装置)」です。これは、従来の「穴から噴射するノズル」とは異なり、高速回転するディスクで薬液を粉砕・噴霧する技術です。 アプリでの設定一つで、粒子径を50μm(極微細な霧)から調整することができます。この微細な霧が、水を弾きやすい葉物野菜の表面を包み込むように付着し、葉の隙間まで薬剤を届けることが可能です。
したがって、
・キャベツやブロッコリーなど、薬剤が付着しにくい葉物野菜
・広大な畑を自動航行で効率よく散布したい方
に最適です。
いかがでしたでしょうか。今回は「葉物野菜の農業用ドローンでの農薬散布のポイント」を解説いたしました。当社では茨城県・栃木県の農家様を中心に農業用ドローンをはじめとするスマート農業について幅広くサポートしております。農業用ドローンに関するお悩みは、お気軽にお問い合わせください。